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東京地方裁判所 昭和44年(行ウ)3号 判決

原告

井上典子

外一四一名

右一四二名訴訟代理人

東城守一

外二名

被告

江戸川郵便局長

上村喜代治

昭島郵便局長

塚田甲一

右両名訴訟代理人

藤堂裕

外三名

主文

原告らの請求はいずれも棄却する。

訴訟費用は原告らの負担とする。

事実

第一  当事者双方の求める裁判

一  原告ら

被告江戸川郵便局長と同昭島郵便局長が、昭和四三年五月四日付で本件原告らに対してなした別紙(一)記載の減給並びに戒告の各懲戒処分は取消す。

訴訟費用は被告らの負担とする。

二  被告ら

原告らの請求を棄却する。

訴訟費用は原告らの負担とする。

第二  原告らの請求原因

一  原告らは、いずれも郵政省職員で、本件原告中別紙(一)(略)記載の(1)乃至(108)の原告らは江戸川郵便局に、同(109)乃至(142)は昭島郵便局にそれぞれ勤務していたところ、被告江戸川郵便局長及び同昭島郵便局長は、昭和四三年五月四日、原告らに対し別紙(一)記載の減給並びに戒告(編註、四六分乃至一時間二〇分の欠務者八名に戒告、三時間一五分乃至三時間五〇分の欠務者一三四名に減給一月間俸給月額の一〇分の一)の各懲戒処分をした(以下これを本件処分という。)。その処分理由は、原告らに国家公務員法(以下国公法という)八二条各号に該当する行為があつたというにある。

二  しかしながら、右懲戒処分は後記三、四、で述べるような違法があり、右処分によつて原告らは「俸給制度に関する協約」「昇給の欠格基準に関する協約」「定期昇給の運用に関する覚書」に基きいずれも定期昇給を延伸されているものであるから(原告船串哲夫、同鈴木順吉につき別紙(二)(三)のとおりとなる)右処分はいずれも取り消されるべきものである。なお原告らは本件各処分について昭和四三年六月二八日人事院に対してそれぞれ審査請求をしたが、三か月を経過しても裁決がない。

三  原告らはすべて全逓信労働組合(以下全逓という)の組合員であつて、同組合が昭和四三年四月二五日指令した賃上げ等を目的とするストライキにそれぞれ参加し、その勤務場所において四六分乃至三時間五〇分にわたり労務の提供を拒否した。右原告らの行為は、憲法上保障された争議行為であるから、これに対し懲戒処分をなし得ない。即ち、

1  原告らを含む郵政省職員は憲法二八条の勤労者であつて、労働者がストライキ行動をとることは基本的人権に基づく権利の行使であつてもともと適法行為である。

原告らの右の如き短時間の単純なストライキの程度をもつては、いまだ公共企業体等労働関係法(以下公労法という)一七条の争議行為に該当しない。

2  かりに同条に該当する行為としても、ストライキは労働者の基本的人権に基づく憲法上の権利行使であつて、右行為者たる原告らに対しては同法一八条にいう解雇の措置がとられうるにとどまり、国公法八二条所定の懲戒処分はなし得ない。換言すれば、国公法八二条一号にいう「法律」には公労法は含まれず、右「法律」に含まれるとされる国公法九六条、九八条一項、九九条、一〇一条の各規定は集団的労使関係の法次元で機能するものではない。又国公法八二条二号は、法令によつて定立された職務を懈怠したことを非難するのであるから、その職務内容についての根拠法ではない労使関係法としての公労法を援用して、義務の存否を云云することはできない。更に国公法八二条三号にいう非行についてみると、労働者の争議行為が非行即ち倫理的道徳的非難をあびるに至るということは到底首肯しうるところではない。従つて原告らの行為は、懲戒処分の構成要件に該当しない。

近時公労法一七条の解釈に関し、判例の展開において提示される「国民生活全体の利益の保障」という概念は次のような法理念として、正しく説明することができるのである。即ち企業は民間私企業、公共企業を問わず、雇用主と労働者という社会的・経済的利害が衝突する者たちによつて運営され、その一方の当事者である労働者の利益よう護の諸活動は憲法第二八条の基本的人権として保障されているのであつて、立法、行政、司法の各府がこの相対立する当事者の紛争に権力的に介入しうるのは、国民がその国家という社会形成の基本原理が侵犯されると判断する合理的な理由の存するとき、またその紛争の継続によつてその企業体の企業運営による便益を享受することが到底期待し得ないような状況が発生したとき等の場合にのみ許されるのであつて、少しの停廃も許されない公共役務とは国民の生命・身体・財産に対する急迫な侵害の除去に関するものであり、国民の日常生活の不便ということとは区別されなければならない。換言すれば右の「国民生活全体の利益の保障」という概念はその「全体」の中に公共役務の中の労働者の個別的利益をふくみ、その個別的利益の保障を奪い去るに必要にして十分な合理的な国民生活の利益を総称したものであつてこれが憲法の法理念である。従つて国公法、公労法の争議行為禁止規定の適用に当つては、公務員の法令上の職務の性質や労働立法の適用の有無等を考慮して、その合理的解釈を行う必要があるのである。

四  仮に原告らの前記各行為につき被告らに懲戒処分権があるとしても国公法における懲戒に関する法規の真の目的は公務員に関する人事行政事務を国会のコントロールの下におくことによつて内閣の恣意的人事行政を禁じようとしたものであるから、たとえ、懲戒条項が存し、またその規定が抽象的であつてもそこに応汎な裁量権を与えられたと考えることはできないものであるところ、本件処分は原告らの単純なストライキ参加について全く恣意的になされたものであつて、本件処分の基準をなした「郵政省職員懲戒処分規程」「懲戒処分標準について」の各規定は極めて自由裁量の余地を広く認めたあいまいなものであり、その処分はいわゆる官吏についての特別権力関係論的思考に基くものであつて、原告らの蒙る前記不利益に照らすときは、その裁量の範囲を逸脱し、権利の濫用に亘り違法であつて取り消されるべきである。

第三  被告らの請求原因に対する認否並びに主張

一  原告らの請求原因一の事実は認める。同二の事実中原告らの定期昇給が原告ら主張の協約等に定められていること、原告らが本件各処分について原告ら主張の日時に人事院に審査請求をなし、三ケ月を経過するも裁決がないことは認めるけれども、その余の事実は争う。右定期昇給に関しては右の外に「昇給の欠格基準に関する協約附属覚書」があるが、原告らの郵政省職員が減給、戒告等の懲戒処分を受けた場合の昇給延伸に関する事項もまた右の欠格基準に関する協約等に規定されている。右昇給延伸は労使間で協定されたところに基づいて行われたものであつて、右協約等はストライキに参加したことを理由として懲戒処分を受けた者についての昇給延伸につき適用除外規定を設けていない。そして右欠格基準に関する協約等は昭和三二年以降昭和三五年四月二三日に締結されるに至るまでの間、労使間で種々協議を重ねてきた結果締結されたもので、その団体交渉における協議の過程で、組合員から組合活動に基因する懲戒処分に昇給延伸を伴うことの是非について疑義と反論が提出されていたにも拘らず、団体交渉の結果これについての特別な適用除外規定を設けることなく締結されたものである。原告船串、同鈴木両名を例示して主張する本件処分による賃金上の不利益については、その発生する可能性は認めるが、原告らの右試算方式は右原告両名が定年退職時まで在職すること、将来にわたるベースアップを見込んでいること等不確定要素を基礎にしたもので承服し難い。

二  被告らが原告らに対し本件懲戒処分をしたのは次のような理由に基づく。

(一)  郵政事業の実態

原告らは、郵政省の行なつている郵政事業のうちのいづれかの業務に従事しているが、「郵政事業」とは、郵便事業、郵便貯金事業、郵便為替事業、郵便振替事業、簡易生命保険事業、郵便年金事業および前記各事業に附帯する業務ならびに日本電信電話公社、国際電信電話株式会社、日本放送協会、国家公務員共済組合、国家公務員共済組合連合会、専売共済組合、国鉄共済組合又は日本電電公社共済組合から郵政省に委託された義務、国民貯蓄債券の売りさばき、償還及び買上並びにその割増金の支払に関する業務、印紙の売りさばきに関する業務、年金及び恩給の支給、その他国庫金の受入払渡に関する業務を指し(郵政省設置法三条)、これらの事業および業務はいづれも国民生活全体との関連性において、それぞれ国民の日常生活に緊密なつながりを持ち、きわめて高度の公共性を有している。そこで、これらの郵政事業を遂行するために責任を負う行政機関として郵政省が設置され、その内部部局の外に地方郵政局、地方郵政監察局、郵便局等の地方支分部局が置かれており、郵便局は地方郵政局の事務のうち、現業事務を行なう機関(郵政省設置法五条、一二条)とされ、郵政事業のサービスをあまねく公平に提供するために全国津々浦々に約一七、〇〇〇局が設置されている。そして、その運営の実態は次のとおりである。

1 郵便事業

郵便事業は、郵便の役務をなるべく安い料金であまねく公平に提供することによつて、公共の福祉を増進することを目的として(郵便法一条)企業的に運営されている国営独占事業である。わが国にはじめて新式郵便制度が採用されたのは、明治四年であるが、以来今日まで一〇〇年以上にわたり全国の郵便網を通じ、正確、安全、迅速をモットーとしたサービスの提供に努め、社会経済の発展、国民生活の向上に寄与してきた。戦後、昭和三〇年代における経済の飛躍的発展に伴い、郵便物数が著しく増加し、とりわけ人口の都市集中化によりその増加は大都市とその周辺に集中する傾向を示しているが、このような事態に対処するため郵政省としては近年郵便事業の近代化計画を押し進め、郵便の種別、料金体系の改正、郵便の規格化、郵便番号制度の導入、郵便番号自動読取区分機郵便物自動選別取りそろえ押印機の開発実用化、機械化集中処理局の建設あるいは郵便物の航空輸送など一連の近代化施策を実施して郵便サービスの向上に努めている。さらに、昭和四六年一〇月から郵便の標準送達日数(郵便ダイヤ)を公表し、郵便を予定日数以内に送達することを公約して利用者の利便に供している。

ところで郵便物数については、終戦直後、戦前水準の半分にまで激減したが、国民生活の安定、経済の復興とともに次第に回復し、昭和三〇年度には戦前の水準をこえ、その後さらに経済の高度成長を反映して増加を続け、昭和四六年度には約一二三億通に達し、昭和三〇年度と比較した場合、実に2.53倍にまでなつている。郵便は、その用途から個人的利用と業務用とに大別されるが、郵便業務はもともと信書の送達を本旨としてはじめられたもので、個人的な利用が中心であつた。しかしその後経済の発展、文化の向上等に伴い新聞、雑誌、印刷物などが取り入れられ、昭和二〇年代後半から経済の高度成長と消費革命の進行を反映してこれらを中心とする国民経済生活に重要な関連を有する業務用郵便が目立つて増加した。また、小包郵便物の需要も年々増加し、昭和四六年度の物数は約一億七千万個に達し、昭和三〇年度の2.53倍となつている。なお、外国郵便も日本経済の発展および貿易の振興に伴つて引受物数および到着物数ともこの一〇年間に二倍以上になつており、とくに航空郵便については、一〇年間に約三倍と著しく増加している。

このように郵便事業は、社会経済の発展とともに、その機能の重要性がますます増大しており、その取扱いは都市部はもとより、地方僻地に至るまであまねく公平に行なわれており、国民の日常生活に欠くことのできない大きな役割を果している。

2 為替貯金事業

為替貯金事業は、郵便事業、簡易生命保険事業と並んで郵政省が経営する主要事業の一つであり、その内容は郵便貯金、郵便為替および郵便振替の事業ならびに年金、恩給の支給、その他国庫金の受入れ、払渡しに関する業務等を包含しており、それぞれ国民の日常生活に緊密なつながりを持つている。

(1) 郵便貯金

郵便貯金は、簡易で確実な貯蓄の手段をすべての国民にあまねく公平に提供することによつて、その経済生活の安定を図り、福祉を増進することを目的として運営されており、(郵便貯金法一条)明治八年に創始されて以来九十余年間国民に親しまれ、国民生活に欠くことのできない貯蓄手段となつている。郵便貯金の利用実態については、その利用者の九九%以上が「個人」であり、しかもその七〇%前後が賃金俸給生活者、主婦、学生、生徒といつた中低所得者層となつており、郵便貯金はこれらのいわば国民大衆の利用者が抱いている「不時の災害に備えたい」「子供の教育費や結婚資金を蓄えたい。」「家屋の新築、改築に備えたい。」あるいは「ある程度まとまつた余裕金を有利に安全に運用したい。」等ささやかにして多様な経済生活安定への願いを充足するためのものであり、これらの願望にこたえるべく通常郵便貯金、積立郵便貯金、定額郵便貯金、定期郵便貯金、住宅積立郵便貯金の五種類の制度を設けている。また、直接に利用者である国民に郵便貯金サービスを提供する窓口機関は地域により、その規模に大小があるが、全国にあまねく設置され、その数は約一七、〇〇〇局に達し、全国金融機関の約四〇%を占めており、またその地域的分布は、民間金融機関が人口と経済力の集積している都市部、特に六大都市に集中しているのに対して、郵便局の配置には偏在はみられない。このような郵便局の普遍的な設置は、全国どこでも出し入れ自由な制度と相まつて、国民に対して便利な利用を可能にしているし、採算上民間金融機関の及び得ない地域の住民の利用を可能にしている。ちなみに昭和四五年度における郵便貯金の取扱口数は四億四八五三万口取扱金額は一〇兆六三六四億円に達しており、これを一日当りに換算すると一四九万五千口三五五億円となり、また郵便貯金の現在高は、昭和四六年三月末現在九兆二千億円に達している。他の民間金融機関の預金量と比較してみると、農協が六兆五四四九億円(四六年一〇月現在)で、これに次ぎ郵便貯金が最高の預金高を保有している。

(2) 郵便為替

郵便為替は、国民に簡易で確実な送金の手段として、あまねく公平に利用させることによつて国民の円滑な経済活動に資することを目的として(郵便為替法一条)明治八年に創始された制度であつて、現在約一七、〇〇〇の郵便局のネットを利用して全国どこえでも送金できるという民間金融機関には類のない利便さから広く国民の送金手段として利用され親しまれている。郵便為替には普通為替、電信為替、定額小為替の三種類があり送金目的に応じて利用されているが、昭和四五年度における利用状況は、受払合計件数約二一九七件、五二二八億円に達している。これらの送金目的としては、学費、生活費の仕送り、隔地者への商品代金の支払等が多く、庶民の消費生活あるいは日常生活を営むうえでの郵便為替の役割は大きい。なお、外国へまたは外国から、親族の生活費、図書、会費等の送金方法として国民が容易に利用できる外国郵便為替の制度があり、万国郵便連合の郵便為替に関する約定または特定の国との間の二国間約定に基づいて、百四十一に達する国または地域との間に業務を取扱つている。昭和四六年度における外国郵便為替の受払口数は九万件、受払金額は一五億円である。

(3) 郵便振替

郵便振替は国民に簡易で確実な送金及び債権債務の決済の手段としてあまねく公平に利用させることによつて国民の円滑な経済活動に資することを目的として(郵便振替法一条)明治三九年に創設された制度で全国の地方貯金局(口座所管庁)に設けられる加入者の口座を中心として、通信販売の決済、保険料、各種会費寄付金、株式配当金の支払い、電気、ガス等の公共料金の支払いおよびこれら公共料金の定期継続振替等、国民経済生活において発生する多様な送金決済のために利用されている。昭和四五年度における受払口数は一億一一八九万件、受払金額は四兆四七二六億円で国民経済の伸張を反映して郵便振替の利用は逐年増加している。

(4) 年金恩給等の支払い

社会保障制度による各種の手当、年金、恩給等の受給者は都市山村を問わず全国に散在しているうえ、受給者の多くは老令で経済的に貧しく、また複雑な手続をとることを不得手とする者が多いので全国に替及している郵便局において簡便な手続きにより、「国民年金法」に基づく福祉年金、「戦没者等の遺族に対する特別弔慰金支給法」に基づく特別弔慰金国庫債券など各種の年金、恩給等の支給を行なつている。なお、昭和四五年度における受給者数は約七一九万人、年間取扱量は約三一四〇万件、金額にして約五〇三六億円に達している。

(5) 国庫金等受払事務

国庫金の出納保管事務はすべて日本銀行が統一して行なうことになつているが、現実には日本銀行の店舗数が少ないため、これのみに限定することは事実上不可能であり、一般国民にも大きな不便を与えることとなるので、全国約一七、〇〇〇の窓口をもつ郵政官署において所得税、法人税など各種の国庫金の受払事務を取扱つている。なお、昭和四五年度における取扱量は受払合計口数約一、七七四万件、受払合計金額約四、六五一億円に達している。

3 簡易生命保険および郵便年金事業

(1) 簡易生命保険

簡易生命保険は、国民に簡易に利用できる生命保険を確実な経営によりなるべく安い保険料で提供し、もつて国民の経済生活の安定を図り、その福祉を増進することを目的として(簡易生命保険法一条)大正一五年に創設されたもので、国が営利を目的としないで経営する生命保険事業である。その特色としては①取扱い機関が全国的であること。②すべて専門医の診査は行なわず無診査で加入できること。③保険料は月掛であること。④国が社会政策的観念から民間保険がかえりみなかつた中産階級以下の人々を対象として創設したものであるため、保険金が一〇万円から最高三〇〇万円の低額とされていること。⑤加入者保護の規定が各種設けられていること。⑥加入者の健康保持及び福祉向上のため施設が全国各地に設けられていること。⑦職業による加入制限がないこと。などがあげられる。なお、簡易生命保険の保有契約高は昭和四七年二月現在約四、五六九万件、金額約一二兆八、九七一億円となつており、国民の経済生活の安定と福祉の向上に貢献しておる。

(2) 郵便年金

郵便年金は国民に簡易に利用できる年金保険を確実な経営によりなるべく安い掛金で提供し、もつて国民経済生活の安定を図りその福祉を増進することを目的として(郵便年金法一条)大正一五年に創始されたもので、簡易生命保険と同様国が営利を目的としないで経営しており、手続が簡便で国民のだれでもが容易に加入できるしくみになつている。なお、昭和四六年三月末現在の契約件数は、約二五万件、契約金額は約五〇億円となつている。

(二)  郵政事業の国民経済に果たす役割

前述のように郵政事業はどの業務をとつてみても、国民の日常生活にきわめて緊密なつながりを持つており、その業務の停廃は国民生活に重大な障害をもたらし、社会全般にきわめて大きな影響を及ぼすものである。

1 郵便事業については、原則として「何人も郵便の業務を業とし、又国の行う郵便の業務に従事する場合を除いて、郵便の業務に従事してはならない。」とされており(郵便法五条一項)他に代替手段のない公共的な独占事業として国営により運営されているものである。このような高度の公共性を有する郵便事業を経営するため「郵便に関する料金は、郵便事業の能率的な経営の下における適正な費用を償い、その健全な運営を図ることができるに足りる収入を確保するものでなければならない(郵便法三条)。」と定められている趣旨に沿つて各種の低廉な料金がきめられている。

ところで、郵便事業の運営の実態については、前述したとおり個人間の信書による通信の増加傾向とともに、事業所、官公庁などに発着する業務用通信等も著しく増加し、今後さらに経済の発展、産業経済構造の高度化および多様化、人口増加と都市集中化、生活水準の向上、情報化社会への進展等の社会経済情勢の進展に伴つて郵便需要は今後一層増加することが予想され、この状態で推移すれば昭和五〇年度には年間およそ一四三億通に、六〇年度までには二〇〇億通をこえるものと推定されている。このように郵便事業は国民経済の発展に占めるウエイトがきわめて高く国民生活に密接な関連を有し、その日常生活に欠かせない重要性を有しているものである。

2 為替貯金事業および保険年金事業については既述したようにその事業の態様からして、これらの事業が果している社会的、経済的役割は資金の運用面における役割をも含めてきわめて大きなものがある。

まず、貯蓄機関としての役割という面からみると、わが国の社会保障制度は現実には必らずしも十分なものとはいえないため、勤労者、個人零細業主、農民などの国民大衆が病気、不時の災害あるいは教育、結婚、住宅のための資金を確保するためには貯蓄は重要な意味をもつている。また、国民大衆の所得水準からみて零細な貯蓄が多くならざるを得ず、不動産、株式への投資と比べて安全確実で利殖性のある貯蓄手段の比重が高い。しかして、換金性と利殖性を兼備した定額郵便貯金、毎月定期的に各家庭に外務員の足が及ぶ積立郵便貯金や簡易生命保険等は国が支払いを保証しており、万人の利用を可能にする郵便局の全国的なネットワークと相まつて、国民大衆の要望をみたし、その福祉の向上に大きく貢献している。

次に、送金機関としての役割という面から見ると、わが国全体の送金決済需要は日本リサーチセンターの調査によれば、昭和四二年度においては、郵政省の提供する現金書留、郵便為替、郵便振替の利用件数は一億六、三六一万件で全体の41.8%を占めており、また、郵政省貯金局が全国の普通世帯を対象に昭和四一年一〇月に実施した世論調査によれば、過去一年間に送金したことがあると回答した世帯は四四%で、このうち銀行送金は3.4%であるのに対して郵便為替13.0%、現金書留33.9%、郵便振替5.9%となつている。以上のように郵便局を利用しての送金は国民生活にきわめて密接なつながりを持つている。

他方、財政投融資資金の供給機関としての役割という面から見ると、郵便貯金や簡易生命保険の資金の運用は、財政投融資計画との関連が深い。財政投融資とは、郵政事業等政府がみずから行なう事業、または国鉄、電々公社、住宅公団、道路公団等、政府関係機関に対して資金の供給をしたり、開発銀行、輸出入銀行、各種金庫、公庫等、政府金融機関を通じて民間産業に資金を供給したり、あるいは地方公共団体に資金を貸し付けたりすることを総称したものであるが、これら財政投融資計画は毎年度国家予算と関連して決定され、国家予算とともに国の財政金融政策の重要な柱をなしている。

郵便貯金の資金は大蔵省資金運用部に預託され、財政投融資計画においては、資金運用部資金として計上される。昭和四七年度財政投融資計画においては、資金運用部資金の四〇%にあたる一兆七〇〇〇億円が郵便貯金資金であり、単独の資金源としては、郵便貯金が最大の規模となつている。簡易生命保険および郵便年金の資金は、郵政大臣が管理し運用することになつているが、その運用対象の大部分は国の財政投融資計画であり、昭和四六年年度の運用計画についてみると、総額六、三五〇億円のうち、契約者貸付は二〇〇億円で残りは財政投融資協力運用となつている。このうち、地方公共団体に二、二〇〇億円をあてて資金の地方還元をはかつているが、運用全体として加入者に密接な関連のある住宅、交通、道路、中小企業などの面に重点をおき、資金の加入者還元の実をあげている。

以上のように郵便貯金資金および簡易保険および郵便年金資金は、利潤の追求のために運用される民間金融機関の資金と異なり国の財政政策、経済政策にしたがつて、国営事業、政府関係機関、政府関係金融機関、あるいは地方公共団体等に供給され、その資金のもつ公共性、社会性を発揮しつつ、国民経済の発展あるいは国民生活安定のために大きく役立つているのである。

(三)  本件ストライキ実施に至るまでの経緯

全逓中央本部は、昭和四三年四月二三日、賃金引上げなどを目的とする公労協統一ストライキの一環として、指令第三五号をもつて「別途指定する支部分会においては、四月二五日、半日ストライキに突入する態勢を確立すること」を指令した。郵政大臣は、右ストライキ準備指令の発出が予想されたので、同日全逓中央執行委員長に対し書面をもつて、組合が闘争の主目標としている賃金引上げ問題については、組合自ら公共企業体等労働委員会に調停を申請し既に事情聴取も終り、調停委員による合議段階にあるにもかかわらず、組合があえて不法なストライキを計画することは、事業の公共性を無視し、労使間のルールを破るものであるから、現に計画中のストライキを即刻中止するよう申し入れるとともに、万一違法な事態の発生をみた場合は、責任者、指導者はもちろん、それに関与した職員に対し厳正な処分をもつて望む旨の警告を発して、組合の反省自重をうながした。そして、同日、被告江戸川郵便局長、同昭島郵便局長は、郵政大臣の右警告書を各局内掲示板に掲出し、職員全員に警告した。

しかしながら、全逓中央本部は、翌二四日、指令第三六号をもつて「四月二五日、別途指定する支部分会においては出勤時よりそれぞれ半日ストライキに突入する」こととの指令を発出した。そこで被告江戸川郵便局長は同日、全逓江戸川支部長に対し、また、被告昭島郵便局長は全逓北多摩西支部長に対して、それぞれ「違法なストライキは中止すること。このストライキに参加した場合は処分の対象となる」旨警告した。さらに被告江戸川郵便局長は、職員全員に対して同年四月二〇日それぞれの自宅ヘストは違法なものであり、このストに参加した場合は厳しい処分を行う旨の文書を郵送し、警告するとともに、同月二四日までの間再三にわたり、口頭で、ストに参加しないで出局するよう命令した。また、被告昭島郵便局長は同年四月二四日に、同局職員に対し、電報などで翌二五日出勤しない場合は、戒告以上の処分となる旨警告するとともに同日必ず出局するよう命令した。

(四)  本件ストライキ実施の状況

1 江戸川郵便局関係

別紙(一)記載の1ないし108の原告ら一〇八名は前記警告にかかわらず、同年四月二五日半日ストライキに突入したので同局庶務会計課長は同日午前七時二〇分頃からスト会場である江戸川区中央一丁目在日朝鮮人総連合東京都江戸川支部前路上において、同会場に入ろうとする右原告らに対して、就労を命令し、また、同課長から全逓東京地方本部委員長にスト中止申入書を手交した。それにもかかわらず右原告らは集会を継続し、さらに局構内に集会場を移動し、同日午前一一時四六分解散するまで、別紙(二)記載のそれぞれの欠務時間欄記載のとおり欠務したものである。

2 昭島郵便局関係

別紙(一)記載の109ないし142の原告ら三四名は前記警告にかかわらず、同年四月二五日、半日ストライキに突入したので、昭島郵便局庶務会計課長らは同日午前七時一六分頃、スト会場である昭島市昭和町三丁目社会党桑島市会議員宅前において、全逓北多摩西支部長に対し、ストライキ中止を申し入れ、また、同会場に入ろうとする右原告らに対し、就労を命令したが、右原告らは集会を継続し、同局入門まで別紙(二)記載のそれぞれの欠務時間記載のとおり欠務したものである。

(五)  本件ストライキによる業務阻害状況

原告らは前記(一)で述べた郵政省設置法三条に定める事業及び業務を、別紙(二)記載の所属において一体的有機的に遂行する職務に従事すべき義務を負うところ、同記載の欠務時間に相当する職務の停廃をきたし、右事業及び業務に多大の支障を与えた。その具体的支障状況を各局別にみると次のとおりである。

1 江戸川郵便局関係

(1) 郵便業務について

本件ストライキによつて生じた郵便外務の配達未処理郵便物数(普通通常郵便物)は、業務規制斗争実施直前の時期である昭和四三年四月一日から同月一五日までの一日平均配達未処理郵便物数四、二四五通を一〇〇とすれば、一四五七(六一、八七〇通)となり、又業務規制斗争実施時である同月一六日から同月二四日までの一日平均配達未処理郵便物数三二、〇四三通を一〇〇とすれば、一九三(六一、八七〇通)となる。これが本件ストライキ当日直接影響を受けたものである。さらに、右ストライキによる影響は、同月二九日まで残存している。これを右の方式によつてみれば、業務規制斗争直前の状態の四、二四五通を一〇〇とすれば、同月二六日は一、四三七(六〇、九九〇通)、同月二七日は一、一〇二(四六、八〇〇通)、同月二八日は九八五(四一、八〇〇通)、同月二九日は七三六(三一、二六〇通)となり、又業務規制斗争実施時の状態の三二、〇四三通を一〇〇とすれば、同月二六日、一九〇、同月二七日、一四六、同月二八日一三〇、同月二九日九八となる。なお、右普通通常郵便物以外の郵便物の配達についても、同等の業務阻害を生じたほか、配達以外の郵便外務業務、並びに郵便内務業務についても多大の支障を与えた。

(2) 貯金、保険業務について

貯金業務については、積立郵便貯金の集金が予定件数の三〇%減の業務阻害を生じたほか、定額郵便貯金の募集その他貯金業務についても多大の支障を与えた。又保険業務については、保険料の集金が予定件数の三三%減の業務阻害を生じたほか、新規契約の募集その他の保険業務についても多大の支障を与えた。

2 昭島郵便局関係

(1) 郵便業務について

本件ストライキによつて生じた郵便外務の配達未処理郵便物数(普通通常郵便物)は前記1、(1)の方式によれば、業務規制斗争実施時の一日平均配達未処理郵便物数一、四八〇通を一〇〇として、八〇一(一一、八六〇通)となり、これがストライキ当日の直接の影響である。さらに、右ストライキによる影響は同年四月三〇日まで残存している。すなわち、右方式によれば、同月二六日は四六六(六、八九〇通)同月二七日、三〇一(四、四五〇通)、同月二八日四一四(六、一二〇通)同月二九日、二七一(四、〇一〇通)、同月三〇日九一(一、三四〇通)となる。なお、右普通通常郵便物以外の郵便物の配達についても、同等の業務阻害を生じたほか、配達以外の郵便外務業務、並びに郵便内務業務についても多大の支障を与えた。

(2) 貯金、保険業務について

貯金業務については、積立郵便貯金の集金が予定件数の五一%減の業務阻害を生じたほか、定額郵便貯金の募集その他の貯金業務についても多大の支障を与えた。又保険業務については、保険料の集金が予定件数の三四%減の業務阻害を生じたほか、新規契約の募集その他の保険業務についても多大の支障を与えた。

(六)  原告らの前記行為に対する法令の適用

原告らの前記の如き違法なストライキに参加し長時間欠務した行為は、公労法一七条一項に違反する行為であるから、国公法九八条一項、九九条に違反し、同法八二条一号、三号に該当する。又同法一〇一条一項にも違反し、同法八二条各号に該当する。よつて人事院規則および「郵政省職員懲戒処分規程」(昭和二六年三月二〇日公達第三三号)五条、一〇条、「懲戒処分標準について」(昭和二六年五月一五日郵人第九一号依命通達)第一、二、(一)項並びに「職員の懲戒処分について」(昭和二六年五月一五日郵人第九一号の一)第五条関係をそれぞれ適用し、本省の承認を得た上ストライキ参加の時間の多寡その他の情状を考慮して、原告らに対し昭和四三年五月四日附で別紙(二)記載のとおりそれぞれ処分したもので本件処分は何ら違法はなく、相当である。

(七)  争議行為と懲戒処分との関係

1 原告らは憲法二八条によつて原告らには争議権が認められているから、その行使は適法行為である旨主張するが、原告らが私企業における職員及び労働組合と同様無制限に争議権が保障されているものでないことは、最高裁判所昭和四一年一〇月二六日、全逓中郵事件同昭和四三年一二月二四日千代田丸事件、同昭和四四年四月二日都教組事件各判決において確定されているところであり、原告らの右主張は独自の見解として採るに足りないものである。

2 原告らは争議行為は労働者の団結体である労働組合自体の行為であり、多数組合員の集団的共同的な活動を本質とし、労働者が企業秩序の拘束から集団的に離脱して、使用者の労務指揮権を排除することを目的とする行為であるから、個別的労働関係を規律する懲戒条項を右争議行為に適用することは許されないと主張する。しかし右主張は現行法体系のもとでは通用しないものである。即ち労働者は、労働組合に加入することによつて、労働組合の団体的統制に服することとなるが、この場合、当該労働者は、使用者との間の法律要件に基く法律関係と、その団体の構成員としての法律関係とによる二重の法規制を受け、この二つの相互の関係は、特別な立法措置がない限り、対等のものであつて、その間に優先関係はない。それ故争議行為即ち労働者が労働組合の指令のもとに使用者の指揮命令から離脱して、その労働力を組合の税制下におくことは、本来使用者との法律関係においては違法であつて、これが適法行為といえるためには、特別の立法措置が必要であり、現行法上、私企業における争議行為が適法行為とされているのは、右の二重の法律関係の間の調整的機能をもつ特別立法措置である憲法二八条、労組法一条二項、七条、八条が存するからである。

従つて当該争議行為及び争議参加者の行為は、これらの法条の適用を受けうるものである限り、使用者との法律関係において、使用者によつてその行為を違法なものとして企業秩序違反の責を追及されたり、民、刑事法上の責任を問われることはないのであるが、右法条の適用を受けられないような争議行為は、右の各責任を問われざるを得ないのである。けだし、違法な争議行為であれば、その争議行為を行なう労働組合の構成員たる個々の労働者は、その争議行為に参加する義務を有せず、又その争議指令に従う義務もないから当該争議行為についてはその労働組合の統制は消滅し、さきに述べた使用者との法律関係上の規制が全面的に回復されるからである。右の理は原告ら郵政省職員にも当てはまるのであつて、原告らと使用者としての国との関係は、任用行為によつて形成され、この任用関係については、基本的に、国公法のすべての条項が適用されるところ、郵政省職員については、団結権が保障されているから前記二重の法律関係が生じ、この二重の法律関係の調整機能を果しているのが公労法であり、同法三条を通した労組法である。従つて、公労法及び右限度で適用される労組法によつて保障されている限り、使用者である国及び郵便局長等の任命権者は、全逓労組の構成員の行為について、任用関係上の規律の法的根拠である国公法の関係規定を適用することはできないであろうが、この調整的立法の保障の埓外にある行為に対しては、国公法の関係規定の適用を否定することはできない。公労法一七条は、全逓労組及び郵政省職員は、郵政省に対して争議行為を行なうことを禁止しており、この規定に反する行為は違法行為であるがこの規定がない場合には、前記調整的立法の保障によつて規制機能を働らかし得ない国公法の関係規定は、この規定が設けられていることによつて、その規制機能を回復しているのである。

3 原告らは、公労法一七条、一八条は争議行為を理由とする解雇について、不当労働行為としての救済を認めない趣旨にとどまり、その他の懲戒処分を認めないものである旨主張する。

(1) この点については、公労法一八条は、通常解雇の規定であるとして労働法学説のうえでは、右の懲戒的性格を否定的に解するものが多い。しかし、公労法一八条の解雇がどのような性格を有するものかは、同法一七条の争議行為禁止の趣旨が企業秩序の設定、維持とどのような関係をもつかという観点と、公労法一八条(ならびに同法一七条)の制定の沿革的観点とから検討されなければならない事柄である。前者の観点については、次に述べるが、後者の観点については、最近、沿革的には、同条の懲戒的性格を否定しえないとする学説上の指摘がなされている。

(2) 公労法一七条の争議行為の禁止が、保護法益との関係でどのような意味を有するかについて、最近、いわゆる都城郵便局事件に関する判決(東京地裁、昭和四六年一一月一二日判決)が出されている。この判決の論旨は、公労法一七条が郵政職員の争議行為を禁止したのは、独占性をもつ国営郵便事業を利用する国民生活全体の利益保護のためという企業外の要請にもとづくものであるが、国公法八二条の懲戒規定の保護法益は、使用者である国の労務指揮命令権の確保と職場秩序の維持であつて、両法条の保護法益が異なるから、公労法一七条違反の行為は、国民との関係で違法となるとしても、使用者たる国との関係では直ちに違法となるものではない、というものである。本件原告らは、まさに右判旨と全く同様の見解を述べていると思われるのである。しかし、これらの見解には、法律の解釈ならびに公務員の法律関係の理解について基本的な誤りがある。

イ 公労法一七条は、公共企業体および国の経営する企業の国家の経済と国民の福祉に対する重要性にかんがみ、その企業の正常な運営を最大限に確保することによつて公共の福祉を増進し、擁護しようとするものである(同法一条参照)。したがつて、公労法一七条は、究極的には、国民生活全体の利益を保護するものではあるが、直接的には、公共企業体および国の経営する企業の正常な運営をはかるために必要な業務秩序を確保することを目的とするものであつて、少くとも、公労法の法域においては、国民生活全体の利益と企業運営の正常性(国公法一条一項にいう「能率的な公務の運営」ということは、これを国営企業の立場でとらえた場合、表現こそ異るものの「企業運営の正常性」と実質的内容を同じくする。)とは矛盾なく併存する保護法益なのである。なぜならば、一般私企業における場合と異なり、公務員(以下に述べることは、公共企業体の法律関係についても同様であるが、記述を簡略にするため、本件に必要な限りで述べる。)の勤務関係における規律は、それが法令、通達等によつて命ぜられているものであれ、将又上命下股の指揮命令関係によつて規律されているものであれ、国民生活全体の利益と密接な関連を有する。すなわち、行政機構の中に求められる統一的活動の要請は、右に述べた規律によつて確保されなければならないものであるが、この要請そのものは、行政が、国民との関係で、整然と別け隔てなく行なわれるためにあるのであつて、法的には平等原理(憲法一四条一項。なお同法一五条二項参照)に由来するものである。したがつて、国民生活全体の利益と能率的な公務の運営を、それぞれ、法目的として分析的に考えることは可能であるとしても、その間の相互肯定的な関連性を無視することはできないのである。

ロ 以上のことは、公労法の関係条項の個別的解釈からも論証できるところであつて公労法三条は、同法一七条違反の争議行為を行なつた者に対する労組法八条の適用を除外している結果、国は、この違反を犯した者に対して損害賠償の請求をすることができる。また、右の違反に対してはいわゆる一八条解雇(その性格については後に触れる。)が可能である。これらは、すべて、企業の場において、使用者としての国と職員との間で行なわれるものである。公労法一七条は、国民生活全体の利益保護のためのみに設けられた規定であると解する立場からは、右の損害賠償や解雇の規定を素直に直視することはできないであろう。

ハ 公労法一七条二項は、公共企業体等におけるロックアウトを禁止し、この禁止違反に対する効果について、公労法は、その一八条において、職員の争議行為に対すると同様の法律効果を認めている。仮りにロックアウトを実施した管理者があつたとした場合、前記都城郵便局事件判決のような思考方法によれば、その者に対しては、いわゆる一八条解雇がなされるかあるいは不処分とされるしかないこととなる。しかし、公労法一七条二項は、作業所を管理する者に対して、使用者としての公共企業体または国が負わせた企業の正常な運営をはかるための義務なのではなかろうか。そして、右禁止の違反を行なつた管理者について、その者が国家公務員である場合には、国公法八二条の適用を否定しえないばかりか、場合によつては、まさに特別権力関係上の規定である国公法七八条の分限規定の適用も否定できないであろう。そうだとすれば、原告らが主張する保護法益の相違という理論に依拠した場合、かかる取扱上の差異を生ずる理論的説明は不可能というほかなかろう。公労法一七条、一八条の意味を法的に考える場合、右に述べた点をも含めて統一的に理解しなければならないのである。

ニ 公労法一八条の解雇がいわゆる懲戒的性格を有するものかどうかは、学説上古くから争われているところであつて、多数の見解は、むしろその懲戒性を否定している。その論旨は、必ずしも一様ではないが、争議行為が集団的労働関係上の現象であることを理由とする見解(この見解の問題点については前記2で述べた)部分を除いて、ほぼ共通しているのは、公労法一八条は、争議行為を理由とする解雇が原則的に不当労働行為にあたらないことを示したものである、としている点である。尤も、この結論は、公労法一八条の一部の意味としては肯定しうるものである。しかし、それでは何故に不当労働行為とならないのかというと、その理由について、従来の学説では、合理的な一片の説明もなされていないのである。

それでは、右の理由は何であろうか。言うまでもなく、公労法一七条に違反する争議行為は、労組法七条一号の「正当な行為」に該らないからである。それならば、その「正当性」を否定する意味はどこにあるのであろうか。これに対する解答は、公労法一七条の保護法益ないし目的の中に見出されるべきものである。さきに、公労法一七条は、国民生活全体の利益と企業運営の正常性を相互不可分のものとして保護しようとするものと解さざるをえないことについて述べた。国の経営する企業の場合、公務の運営による国民生活全体の利益の実現は、まず第一に公務の能率的且つ正常な運営によらなければならないものであることを否定する者はなかろう。そして、公務員のストライキが公務の正常な運営を阻害するものであることも、これまた否定する者はないであろう。したがつて、公務の能率的且つ正常な運営を確保するための企業秩序は、これを集団的労働開係との関連においても確保する方法を設けておかなければならないのである。これが公労法一七条の法意である。そうだとすれば、同条は、公共企業体および国の経営する企業における企業秩序を設定した規定にほかならないのである。したがつて、公労法一八条の解雇は、この企業秩序違反に対する法律効果であり、懲戒的性格を否定しえないものとみなければならないのである。そして、かく解することについては、沿革的にも矛盾しない(この点の指摘については、すでに述べた。)のである。

右に述べたとおり、公労法一七条、一八条は、実定法の解釈のうえで、国公法八二条と異質のものではない。このことは、更に、公労法四〇条が国公法八二条の適用を除外していないことによつて立法的な解決がはかられているのである。

しかして、公労法一七条違反の争議行為を行なつた者に対して国公法八二条が適用されるその余の法論理は、前記2で述べたところである。

(八)  原告らは、短時間のストライキへの単純参加と懲戒処分の可否を、昇給延伸という不利益との関係で問題にしている。

1 この点について、原告らは、本件処分によつて退職時までに自動的に数十万円の損害を受ける旨主張する。しかし、前記の如く右の試算は、すべての不確定要素を捨象した紙の上での単純な算術計算でしかなく、また、全逓労組の犠牲者救済規定による実損額補填の事実を陰ぺいしているもので裁判の場における実態把握の方法としては全く科学性に欠けるものである。仮りに、右懲戒処分によつて、被処分者についてそれに伴う昇給延伸の結果による不利益を生ずるとしても、その不利益は、すべて原告らが加入している全逓労組と郵政省との間の協約等において定められているところであつて、この点は、原告らも認めているところである。しかして、右協約等は、その締結時に、すでに、本件と同様な争議行為に対する懲戒処分が行なわれていた事実を背景としていたのであるから、本件の如き態様のストライキに参加した者に対して昇給延伸を伴う懲戒処分を行ないうることについて右協約等の締結当事者間に合意が成り立つているのであり、原告らはその適用を受けている者である。

2 ところで、右昇給延伸の不利益について、もし仮りにこれを懲戒処分権の濫用の有無との関係で考えるとすれば、本件ストライキが国民の生活に及ぼすべき影響は原告らの右不利益に比して軽微であるとの断定が必要であろうう。しかし、被告らがこれまで述べてきた本件争議行為の態様、業務阻害の事実に照らせば、本件ストライキの国民生活への影響は到底軽視しうるものではない。

3 原告らは、懲戒処分とそれに伴う効果を総合的にとらえ、この軽重との関係で公労法一七条の争議行為の禁止の限界、すなわち禁止対象となる争議行為の範囲を限定しようとしているように思われる。しかし、現行の公務員制度のうちにある懲戒処分の効果(間接的効果を含む。)の軽重を慮つて、公労法一七条の禁止対象を限定しようとする方法論は、法解釈の論理としては完全に逆立ちしたものであつて、かかる態度こそ法解釈としては極力回避されるべき政策論的解釈の典型であつて、裁判の場では採るに足らない議論である。

4 ところで、公労法一七条の争議行為の禁止、すなわち同条違反の行為の違法性は、現行法体系のうえでどのように位置付けられるべきものであろうか。周知のとおり、いわゆる全逓中郵判決以後可罰的違法性の問題と違法性の相対的評価の問題に議論が集中し、とりわけいわゆる四・二都教組判決にいう「違法性の強い争議行為」、「違法性の弱い争議行為」、「実質的に争議禁止条項に該当しない場合」の当て嵌めの議論が行なわれている。ここではひとまず右の分類を認めたうえで本件についての議論をすすめることとする。

(1) 公務員の争議行為の禁止に関する実定法構造は、争議行為を禁ずる旨の禁止条項(国公法九八条二項または公労法一七条、地公法三七条一項または地公労法一一条)と、この禁止に違反した者に対する罰則条項(国公法一一〇条一項一七号、地公法六一条四号および現業職についての従来の実務例では各事業法の罰則規定)からなつている。しかして、いわゆる四・二都教組判決における違法性の強弱すなわち可罰的違法性の問題は、右の罰則条項の適用の有無の問題として考えられているのであり、その判断要素としては、当該争議行為を構成した職員の職務の公共性の程度、ならびにその争議行為の態様から生ずる保護法益である国民生活への影響のおそれと労働基本権を尊重することにより実現しようとする法益の比較衡量があげられている。一部には、これと同じ考慮が、禁止条項の適用および刑罰以外の法律効果の発生の有無についてもはらわれるべきであるかのように誤解されているようである。このような考え方によれば、罰則条項の適用の有無の問題と禁止条項の適用の有無の問題を単なる量的な段階論によつて処理しようとしているものである。しかし、この考え方は、刑事法理論における違法性、すなわち反社会性・反倫理性の判断要素としては意味があると思われるが、損害賠償や解雇、あるいは懲戒処分の可否を考える場合には殆んど無意味な比較衡量論といわなければならない。けだし、前記の禁止条項違反の効果として考えられる損害賠償や解雇の基礎をなす私法理論における違法性は、権利侵害であり、また懲戒処分の基礎をなす組織法理論(ここでは特に懲戒罰に限定して述べる。)におけるそれは、組織秩序の侵害である。すなわち、これらの違法性の内容は、いわば通念的に判断されるものではなく、訴訟上の立証事項なのである。この場合、立証の内容として、前記の法益比較衡量の要素の立証を求めるとすれば、これは労使いずれの訴訟当事者にとつても不可能を強いるものである。さればこそ、本件に即していえば、組織法問題においてなされるべき判断事項は、その争議行為の態様、すなわち、業務阻害あるいはその危険の有無にとどまらざるをえないのである

(2) さきに(七)3、(2)において述べたとおり、組織秩序を形成する公務の能率的運営は、それ自体公労法の保護法益であると同時に国民生活全体の利益を実現する法的手段である。そして、ある公務(職務)が公共性を有するということは、それが国民生活全体の利益の実現を指向しているということに外ならない。したがつて、いわゆる全逓中郵判決等の最高裁判所の判旨にもあるとおり、その公務内容のそれぞれによつて公共性の度合いは、必ずしも一様ではないであろう。そして、この点を考えるとすれば、その公共性が低くなればなる程国民生活全体の利益に障害を及ぼす度合いが軽微となるといえないこともないわけである。この場合には、法論理的には、業務阻害=公務の能率的運営の阻害の事実による国民全体の利益の保障への影響という推定的機能が遮断されるとみることになろう。そうだとすれば、当該争議行為が公労法一七条等の禁止条項に該当する違法な行為かどうかは、業務阻害の実態とその職務の公共性の判断によつてなされるべきものである。そして、本件原告らの行為を公労法一七条違反の行為とみるかどうかも亦、右の観点からなされるべきものなのである。しかして、郵政事業の強度の公共性については、すでにいわゆる全逓中郵判決において最高裁判所の認めているところであり、前記二(一)、(二)で述べたとおりである。

第四  原告らの認否

被告ら主張二の(三)、(四)は認める。同二の(五)のうち1(1)及び2(1)の各郵便業務の普通通常郵便物の未処理状況の部分のみ認め、その余は争う。

第五  証拠〈略〉

理由

一原告らがその主張のとおりの郵政職員であり、被告らが原告らに対しそれぞれ昭和四三年五月四日付で原告ら主張のように減給又は戒告の懲戒処分をしたことはいずれも当事者間に争いがない。

二右懲戒処分につき被告ら主張の処分事由の存否について検討する。

(一)  被告ら主張の原告らの従事する郵政事業の実態、及び右郵政事業の国民経済に果たす役割については、原告らの明らかに争わないところであるから、これを自白したものとみなす。

(二)  前記被告らの主張中第三、二(三)本件ストライキ実施に至るまでの経緯、同(四)本件ストライキ実施の状況の各事実については当事者間に争いない。

(三)1  本件ストライキが実施され、そのため江戸川郵便局、昭島郵便局の各郵便外務の配達未処理郵便物数(普通通常郵便物)がいずれも被告主張のとおり増加し、その影響が江戸川郵便局では同月二九日頃まで昭島郵便局では同月三〇日頃まで残存したことは当事者間に争いない。

2(1)  〈証拠〉を綜合すると、江戸川郵便局においては、本件ストライキによる当日の右1以外の影響は次のとおりである。

イ 郵便関係  窓口は他局管理者一名の応援により平常どおりであつたが、通配は午前一号便が五四区欠(一〇〇%)、同二号便が九区欠(一六%)、小包は二三五個配達できず滞留、速達は約八〇〇通が午前中配達できず、午後に遅延した。

ロ 貯金関係  窓口は特定局長三名の応援により七二件の預入、払戻し業務を取扱つたが、平常日の平均取扱件数約一二〇件に比し、四〇%の減少、積立貯金の集金業務は三〇%程度の低下であつた。

ハ 保険関係  窓口は特定局長一名の応援により一九件の受入、払戻等の業務を取扱つたが、平常日の平均取扱件数二〇件乃至二五件に比し約四〇%の減少、集金業務は三、五一〇冊の交付に対し七六一冊の取立(平常の取立率約六二、二%とすると約三〇%低下)であつた。

ニ その他  応援にかり出された特定局長の本務局における業務にも多かれ少なかれ支障をきたした外江戸川郵便局における貯金募集業務に約六〇%、保険募集業務に約一〇〇%の支障をきたした。

以上の事実が認められ他に右認定を左右するに足る証拠はない。

(2)  〈証拠〉を綜合すると、昭島郵便局における本件ストライキによる当日の右1以外の影響は次のとおりである。

イ 郵便関係  窓口は特定局長二名の応援により平常どおりであつたが、通配は午前一号便が一九区欠(一〇〇%)、取集は一、二号便が欠、小包は九一個滞留、速達は一四〇ないし一五〇通が午前中配達できず午後に遅延した。

ロ 貯金関係  窓口は特定局長三名の応援により八二件の預入払戻しの業務を取扱つたが、平常日の平均と差はなかつた。積立貯金の集金業務は五一%程度低下した。

ハ 保険関係  窓口は職員一名を就労させ、九件の受、払事務を処理したため平常と差がなく、直接の影響はなく、集金業務は一〇二〇冊の交付に対し三五〇冊の取立であつた。

ニ その他  応援にかり出された特定局長の本務局における業務に或る程度の支障をきたした外昭島郵便局における貯金募集業務に約九〇%の、保険募集業務に約六六%の支障をきたした。

以上の事実が認められ、他に右認定を左右するに足る証拠はない。

(四)  右(一)乃至(三)の判示事実を総合すれば、原告ら職員の行う業務は多かれ少なかれ、また直接と間接との相違はあつても、等しく国民生活全体の利益と密接な関違を有するものであり、その業務の停廃が国民生活全体の利益を害し、国民生活に重大な障害をもたらすおそれがあるものであり、原告らの本件ストライキは両郵便局において全体として、ほゞ同時に四六分乃至三時間五〇分間に亘り欠務行為を行つたものであつてその及ぼした影響は前示認定のとおり軽視すべきでなく、右は争議行為の正当性の限界を超えたものであつて、公労法一七条一項の禁止規定に違反して行われた違法な争議行為であるというべきである。従つて原告らの右行為はいずれも国公法九八条一項、一〇一条一項、九九条に違反し、同法八二条各号に該当するものといわなければならない。

三原告らは本件ストライキは組合活動としてなされたものであるから、いわゆる個別的労働関係を規律する国公法八二条等の懲戒規程は本件には適用さるべきではないと主張するので按ずるに、国公法八二条の法意は業務の正常な運営の確保を目的とする公共企業体等の企業ないし職場秩序の維持にあるのに対し、争議行為は労働者が一定の要求の貫徹を目指して団結し、使用者の労務指揮権を排除するものであるから、右両者は両立し得ない関係にある。しかし、労働者の争議行為が、使用者の懲戒権を排除し得るのは、その争議行為が、その目的および態様において、労組法七条一号所定の正当性を具備するかぎりにおいてであつて、右正当性を逸脱する場合には、本来かかる違法な争議行為をなすことは許されないものであり、従つて、これを組成する個々の労働者の行為も当然個別的労働関係上の規制を受けるものと云わねばならない。この見解は公労法三条が公共企業体等の職員に関する労働関係について労組法を適用し、かつ、同法八条の適用を除外しながら、同法七条一号本文の適用を除外していないこと、公労法がその四〇条一項一号において国公法八二条の適用を除外していないことにも照らし肯認し得るところである。

四原告らは公労法一七条違反の争議行為に対する措置は保護法益ないし条文上からみても同法一八条所定の解雇に限られるべきであると主張するので按ずるに公労法一七条の保護法益が前掲判示の如く国民生活全体の利益であることは疑いを容れないところであり、同条の違反に対する法律効果としては、同法一八条の解雇並びに損害賠償の民事責任追及にあることも明らかなところであるが、右各措置のみに限定されるのは、公労法一七条違反の争議行為が前掲判示の如き正当性を具備するかぎりにおいてであつて、違法な争議行為の場合には組合員はその争議指令に従う義務を負担せず、この場合には前判示の如く懲戒処分による責任の追及もあり得るのである。従つて右の範囲においては、公労法一七条の保護法益中には前記国民生活全体の利益の外に能率的な公務の運営又は企業運営の正常性を確保する目的のための職場ないし企業の秩序維持その他の法益を包含しているものと解せざるを得ない。そして、公労法一七条違反の争議行為が発生した場合、同法一八条によつて解雇するか、否か、又は国公法八二条による措置をとるか否かは労働者のなした争議行為の態様、目的、程度等に応じ、使用者たる国又は公共企業体の合理的な裁量に委ねられているものと解すべきである。原告らの右主張も採るを得ない。

五原告らは被告らのなした本件各懲戒処分は明らかに過重な問責であり、権利の濫用として無効であると主張するのでこの点につき判断する。国公法八二条は、同条の各号の一に該当する違反行為をした職員に対し、懲戒処分として免職、停職、減給又は戒告の処分をすることができるとしているが、懲戒をするかどうか、右懲戒の種類のうちどのような処分をするかは、違反行為の程度、目的、態様のほか懲戒処分によつて当該職員の受ける打撃等その他の情状に照応して合理的に妥当性をもつものでなければならない。そこで本件につき検討するに、原告らの本件争議行為が全逓中央本部の罷業指令に基くものであつたこと、本件ストライキは比較的平穏に行われたこと、右ストライキの目的は中心目標としては賃金引上げであつたこと、争議行為の行われた時間および公務の停廃の程度は前記記載の如きものであつたことは前記認定したとおりであり、一方〈証拠〉によれば、本件争議行為により、江戸川郵便局(全逓江戸川支部)関係では、支部長柴田頼三を含む三役は減給一〇分の一を一〇ケ月乃至一二ケ月とする懲戒処分がなされたこと、郵政省と全逓との間に減給四月未満の場合には一号俸、四月以上の場合には二号俸、戒告一回について一号俸いずれも定期昇給の際当該職員の定期昇給号俸数(一年につき四号俸昇給)から減ぜられるものとの協約が成立していることが認められ、右認定を左右する証拠はない。以上のような事情を綜合すれば、原告らの本件処分によつて蒙る損害の点を考慮しても被告らが原告らに対し、本件各減給、戒告処分を選択し、前記各法条並びに弁論の全趣旨により明らかな前記郵政省職員懲戒処分規程等を各適用してなした本件各処分は過重な問責であつて、懲戒権の濫用であるとは認められない。

そうすると、被告らの原告らに対する本件懲戒処分には違法な点はないというべきであるからこれが違法であることを前提とする原告らの本訴請求は、いずれも失当として棄却することとし訴訟費用の負担につき民事訴訟法八九条、九三条一項本文を各適用して主文のとおり判決する。

(中島恒 根本久 戸田初雄)

別紙(一) 〈略〉

別紙(二) 原告船串哲夫の不利益計算書

第1年目

(円)

4,250

2

4,462

3

4,685

4

4,919

5

5,164

6

5,422

7

5,693

8

5,977

9

6,275

10

6,588

11

6,917

12

7,262

13

7,625

14

8,006

15

8,406

16

8,826

17

9,267

18

9,730

19

10,216

20

10,726

21

11,262

22

11,825

23

12,416

24

13,036

25

13,687

26

14,371

27

15,089

28

15,843

29

16,635

30

17,466

31

18,339

32

19,255

33

20,217

34

21,227

35

22,288

36

23,402

37

24,572

38

25,800

39

27,090

40

28,444

512,680

退職金

100,380

合計

(円)

613,060

別紙(三) 原告鈴木順吉の不利益計算書

第1年目

10,625

2

11,156

3

11,713

4

12,298

5

12,912

6

13,557

7

14,234

8

14,945

9

15,692

10

16,476

11

17,299

12

18,163

13

19,071

14

20,024

15

21,025

16

22,076

17

23,179

18

24,337

19

25,553

20

26,830

21

28,171

22

29,579

23

31,057

439,972

退職金

109,560

合計

(円)

549,532

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